ほっこり
「七辻屋に行ってこ~い」
バコン…!
有無を言わさず夏目のゲンコツが飛ぶ。
「自分で行け」
「にゃんだとぉ~、わしを誰だと思っているっ!」
「ブタねこ」
「しっ…失礼なっ!」
「なんでもいいから、ちょっとおとなしくしててくれよ、ニャンコ先生」
「ん?」
「ここは田沼んちで、田沼の親父さんもいるんだから…」
「だから、茶菓子でも…」
夏目がニャンコ先生と不毛な会話をしていたところへ、当の田沼本人が戻ってくる。
「っと、悪い…戸開けてくれるか、夏目」
「わかった」
「よっと、ほら好物だろ、七辻屋の饅頭」
田沼の持った盆の上にはお茶と七辻屋の饅頭がのっていた。
「にゃぁ~ん」
あっさり田沼の足元にすり寄るニャンコ先生である。
「現金な奴だなぁ」
まったりとした空気の流れるそんな日の出来事だった。