夏目友人帳 田夏
昨日の雪が残る庭を先生がぽてぽてと足跡をつけながら、戻ってきた。 「この寒いのに、どこに行ってたんだ?」 「ちょっと、一杯だ…」 「全く」 相変わらずの先生の様子に、思わずため息が出てしまう。 そんな空気をまるで読まない先生はのんきに部屋に入っ…
「夏目の唐揚げもーらい!」 「おいこら、西村っ!」 昼休み、クラスの違う田沼と北本もうちのクラスまで来て、弁当を広げるのがいつのまにか当たり前のように習慣づいていた。 西村が人の弁当を覗き込んでは、気に入ったおかずに手を出すのも定番で、それは…
「七辻屋に行ってこ~い」 バコン…! 有無を言わさず夏目のゲンコツが飛ぶ。 「自分で行け」 「にゃんだとぉ~、わしを誰だと思っているっ!」 「ブタねこ」 「しっ…失礼なっ!」 「なんでもいいから、ちょっとおとなしくしててくれよ、ニャンコ先生」 「ん…
妖したちが例によって、林の中で宴会などと称したどんちゃん騒ぎを繰り広げる中、夏目は酒をかっ食らうニャンコ先生を置き去りにして、ふとその場から離れた。 林の向こうから微かな声が聞こえた気がしたのだ。 そんな夏目の様子に気づいたヒノエが、さり気…
「キレイだね」 立ち止り、すっかり新緑に彩られた桜の木を見上げていると、後ろから声が掛かる。 「もう桜の花は散ったけど、葉っぱの緑がすごくキラキラしてたから、思わず立ち止って見てた」 すぐ傍まで寄ってきた夏目が、眩しそうにしながら桜を見上げる…